映画を観、思いを致す

天使の分け前

スコッチウィスキーや、スコットランドの荒涼とした景色に憧れのある私にとって、本作でスクリーンに映される本場の蒸留所内部やハイランドの景色は、それだけで及第点を与えられる。本作を見るにあたり、労働者階級の若者が這い上がっていく姿が描かれている...
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華麗なるギャツビー

原作を読んだのが10数年前で、かなりストーリーも忘れつつあり、ラストの哀しみだけが印象に残っていた。本作はあのムーラン・ルージュを撮った監督が手掛けると聞き、20年代の浮かれたアメリカの豪華絢爛さが画面にこれでもかと再現されるのかと、期待と...
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さよなら妖精

自分たちを取り巻く文化について、意識することなく同化することができ、自分の属する文化を客観的に見つめることができるようになるのは、思春期が過ぎた頃ではないだろうか本書は、自分たちの文化への距離が定まったばかりの主人公たちが、異国からの旅人に...
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フリーター、家を買う。

著作全てを読んでいる訳ではないが、著者のテーマの選び方と採り上げ方のうまさには感心する。本書では、非正規労働者が増える一方の我が国の現状に対する、著者なりの回答を、読みやすく仕立てあげてくれている。衣食住が何とかなってしまい、国土拡張の余地...
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ホルモー六景

重いテーマの本を読んだ後は、気軽な書物を読みたい気分になるもの。丁度手元にあった本書が、その役を立派に果たしてくれた。鴨川ホルモーは、京都を舞台にした奇想で大いに楽しませてくれたが、実はこの物語には伝統という時間軸、そして京都の地理感覚とい...
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藁の楯 わらのたて

とにかく俳優陣の演技が素晴らしい。とくに主人公演ずる大沢たかおさんは、プロ意識と個人的な思いの狭間で葛藤する様が見事である。護送する側の5人のそれぞれに抱えた職務への責任と、内に隠した事情を隠してのせめぎ合いは、不自然さを少しも感じさせない...
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昭和天皇 下

下巻では、日華事変から太平洋戦争の開戦と敗戦、戦後の崩御までの過程が、上巻と同じ筆致であますところなく取り上げられる。昭和史に興味を持つものにとって、上海事変以降の敗戦までの過程は重要な時期である。本書ではその時期の主要な国事決定過程のほと...
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昭和天皇(上)

太平洋戦争が終わって28年後に生まれた私は、戦前の神聖視された天皇家も知らなければ、教科書の墨塗りに明け暮れた経験もない。自宅に御真影や写真集が常備されていることもなく、象徴としての君主として受け入れてきた世代である。特に思い入れがなかった...
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名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)

夜だったこともあってか、子供連れはほとんど見られず、我が家ぐらいのものである。だが、逆にそれは本作が大人の鑑賞にも耐えられるものであることを示している。本作ではイージス艦の機密をめぐるスパイ・サスペンスの作風で一貫しており、本格ミステリを期...
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悪の教典 下

上巻がジェットコースターの徐々に登り詰める緊迫感にあるとすれば、下巻はひたすらに下り堕ち、滑り逝く、激走である。前半の心理戦とは打って変わって、後半は肉弾戦であり、アクション映画ばりの銃撃戦が展開される。校舎内での大量殺戮の描写に費やす筆力...