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乳と卵

著者の本は初めて読んだ。芥川賞受賞作。かなり饒舌な関西弁のセリフが縦横に飛び交い、それとは対極的にしゃべらない娘の日記調の独白がバランスを取っている。帯に山田詠美氏が饒舌なようでいて無駄がないセリフというようにおっしゃっていたけれど、そうか...
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のぼうの城

何か月か前に雑誌歴史人で忍城の攻防戦が取り上げられていた際に、著者のインタビューも掲載されていて興味を持っていた本。この本は面白い。歴史小説はそれほど読みつくすようにして読んでいないけれど、隆慶一郎氏の作を初めて読んだときのようなすぐれた娯...
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だれが信長を殺したのか

この夏に石田三成公の史跡を追って関ヶ原に行った際、島津義弘公の陣跡に行ったのをきっかけに読んだのがこちらこの著者の視点の切り口に興味を持ち、もう一冊借りてみたのがこちらの著書。新たな視点とあるけれども、私にとっては既に既出の論点でした。夏草...
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Pの密室

読者の期待に応えようとすればするほど、内容、トリックそしてそれに比例して名探偵の資質がずば抜けて上がっていかなくてはならないのが推理小説。その無茶ともいえる読者の要求に応えようとする氏の作品、私は昔から読んでいて好きです。けれどさすがに要求...
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初恋

こちらの著者、プロフィール非公開というのが非常に興味を惹かれる。なぜかというとこれは著者の半自伝的な3億円事件に関わる実行犯と計画犯の物語だから。簡明な文体で難解な内部事情をこまごまと描くわけでもなく、ただたんたんとあの事件の一日を描写して...
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俺の考え

著者が一番油の乗っていた時期のエッセイ集。自ら下品という飾らない口調で述べる意見の数々は、学問などそっちのけでとにかく現場で叩き上げた職人的な思いがこもっている。信頼と金銭を比較する論点がいくつか出てくるが、かならず信頼を優先させろという結...
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重力ピエロ

著者の小説の登場人物は、とかく魅力的に思える。世の中に迎合も白けもしない替わり、エピソードの隙間から色んな教訓を引っ張り出してくる。遺伝子を扱う本書では、生を司る相手だからか死生観について機転の効いた言動が次々飛び出してくるのが印象的。'1...
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関東大震災 消防・医療・ボランティアから検証する

吉村昭氏の名著やその他新書やムックの数々を読んできた私。春先には「東京・関東大震災前後」4-8188-0932-2 の論点のユニークさや細かさに勉強させられたのだが、こちらの本も参考になった。未曽有の大災害になった理由を、当時の技術力の未熟...
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名将の条件 日露戦争七人の陸将

海軍が善で陸軍が悪という第二次大戦に対しての二元的な考えからは脱したつもりの自分。ところが陸軍のことはまだ知識不足なのでまずは二〇三高地の争奪戦ぐらいしか印象の無い、日露戦争における陸軍の動きを追ってみようということで読んでみました。日清・...
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レディ・ジョーカー〈下〉

いろんな結末を想像していたつもりが、様々な意味で納得のいく終わりかた。罪を、偏に、紋切的に断罪される行為として描いていない。人が人として人の世に生きていく限り、裁きや過ちの裏表を繰り返しつつ或るのが罪。人間がこの世にあることの意味を、罪の意...