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震度0

警察内部というよりも組織の中で戦わねばならぬ閉じた世界のやるせなさ。仕事場だけでなく家庭にも裏表を持ち込む組織内の争いの陰惨さを描き出そうとした著者の意図がくみ取れる。震度0というタイトルには様々な意味を込めてのものであろうが、それは、表だ...
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国鉄スワローズ1950‐1964―400勝投手と愛すべき万年Bクラス球団

プロ野球史に興味を持つものとしては、国鉄スワローズの名前は避けては通れない。国とプロ野球という今では考えられない組み合わせもさることながら、400勝金田投手の名前が残る限り、必ず言及されるからである。晩年こそ名球会会長を追われる形で辞任した...
映画を観、思いを致す

おおかみこどもの雨と雪

全くの事前知識なしで家族と見に行った。アルプスの少女ハイジのような大人も楽しめる子供向け映画を想像していたのだが、予想とは違い、子を持つ大人向けに訴えかけるものがあったように思う。アニメはジブリアニメを見る程度で、それほど詳しくないのだが、...
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すべての美しい馬

少年と青年を隔てるものがなにか、という主題について近代文学では、幾多の作家が採り上げてきた。大部分の人は少年から青年への移り変わりに気付かず、青年になって初めて自分が何を失い何を背負ったかを知る。そして、社会に囲われ時代に追われる自分を突き...
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追想五断章

残された遺作短編を元に、作者の素性と、そこに隠された事情を探っていく内容。と書くと凡庸な内容のように思われるかもしれないが、遺作短編5編の内容に工夫をこらし、読者の予想を裏切る方向へ結末を進めていく筆力は見事である。遺作短編5編の内容がいず...
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マルドゥック・スクランブル〈改訂新版〉

SFを読まなくなってだいぶ経つのだが、面白い作品に巡り会えず読まなくなったのではない。むしろSFこそは想像力の限りを尽くして世界観を構築する刺激的なジャンルだと思っている。それゆえに読者にもその技術に裏打ちされた世界観を理解することが求めら...
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昭和十七年の夏 幻の甲子園―戦時下の球児たち

私の実家は甲子園であり、幼少のころから大和球士氏の書く大人向けの野球史書などを読む子供であったため、未だに本書のような秀作に出会うたびに、心が高鳴る。本書は戦前最後の中等野球大会として開催されながら、主催者が朝日新聞社ではなく文部省とされた...
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からだの知恵 この不思議なはたらき

本書を手に取ったのは、この頃、我が家のヨーキーの小春が急激に体調を崩し、何かせずにはいられなかった焦りから。結局本を読み始めて2日後に、小春は天に召されてしまい、人間の身体について説明された本書は小春にとって何の意味も持ちえないものとなった...
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闇の子供たち

著者の作品は本書が初見。本書はノンフィクションとフィクションの境をあえて曖昧にした内容で、論議を呼び起こし映画化もされた作品である。タイ農村部の人身売買の取引と、少女たちが売られ、性の欲望に蹂躙されていく様が、ポルノと見間違えるぐらいのえぐ...
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傾いた世界―自選ドタバタ傑作集〈2〉

ミュージシャンのベスト盤に相当する、筒井氏のベスト集。ベストというに相応しい収録作である。関節話法は読むたびにゲラゲラ笑ってしまう。難しいことは考えず、ただひたすらに笑いに徹することのできる、稀有な短編集。ベスト盤が出せる小説家というのもそ...