読ん読く

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1Q84 BOOK 1

本稿を書き始める数日前、今年度のノーベル文学賞受賞者が発表された。有力候補とみなされていた村上春樹氏は、残念ながら受賞を逃した。毎年のように候補者に名が挙がる氏であるが、本人は同賞に対しそれほどの拘りはないように思える。私の思い込みであるが...
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国民ID制度が日本を救う

構想がマスコミで取り上げられる前から、私は国民ID制度には賛成であった。国民ID制度が世の話題に上り始めた頃、制度に対し国民総背番号制云々といった揶揄が横行していた。私はそのような、本質とは違った世論を醒めた眼で眺めていた。データ管理を行う...
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残り全部バケーション

本作は著者の連作短編集である。デビュー当時から、連作短編集に独自の世界を発揮していた著者だが、本書もまた、その系譜に連なる名作である。著者の作品に登場する悪役は、どこか憎めない奴らが多い。それが作品に無二の味わいを効かせてくれている。本書に...
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現代日本の問題集

今の日本を取り巻く状況。今の日本人はどう思っているのだろう。危機感に駈られている人。他人任せでなすがままの日々を送る人。人類の善意と叡知に希望を託す人。諦めを隠すために、多忙な仕事に没頭する人。人によって考え方も人生観も色々である。私にそれ...
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最後の注文

人生。儚く、危なっかしく、そして愛すべきもの。出会い、別れ、喜びと苦しみ。人の数だけそれぞれの生が営まれ、生き様が刻まれる。それは、死に際しても同じ。生の数だけ死が、生き様に応じた死に様がある。有史以来書かれたあらゆる小説は、人生を描く芸術...
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ある遭難者の物語

巨星墜つ。訃報を聞いた時の私の感慨である。百年の孤独を始めとしたマジック・リアリズムの作品群。ラテンアメリカ文学の巨星の中で、一際大きく輝いていたのが著者であった。土臭いラテンアメリカの風景が目に浮かぶ。土俗的な描写の中に、きらびやかなペン...
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藁の楯

映画館で「藁の盾」を観たのは本書を読む1年前、5/18のことである。大沢たかおさん、藤原竜也さん、松嶋菜々子さんなど錚々たる俳優陣に支えられ、その演技力とプロットの独創性に唸らされた映画であった。見終わった後に原作がビーバップハイスクールを...
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独立国家のつくりかた

今年前半の私の心をざわめかせた一冊として、記憶に残るであろう本書。本書の内容が私の行動や考え方に与えた影響は少なくない。本書を購入したのは、新宿の紀伊国屋書店。思考の角度を変えたくて、社会学やコミュニティ学のコーナーに赴き、平積みになってい...
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靖国―知られざる占領下の攻防

3か月前の1月に読んだ坪内祐三著「靖国」は、幕末の東京招魂社からの靖国神社の歩みを、膨大な周辺文化との関わり合いを通して解き明かした良書であった。江戸から東京への境目を時間的にも空間的にも司ったのが靖国神社であると喝破したのは前述書である。...
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鉄道忌避伝説の謎―汽車が来た町、来なかった町

昔からの街歩き好き、旅行好きである。名所旧跡はもちろん、風光明媚な景色や古人の遺した事跡、地元の人々との交流。旅から得られる喜びは何物にも替え難い。街歩きとは、時間の無い私にとって、それら旅のエッセンスを手軽に味わう手段でもある。歴史ある街...