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二流小説家

宝島社の「このミステリがすごい」は私が毎年必ず買い求めるガイド本だ。本書は「このミステリがすごい」2012年版の海外部門で一位になっている。主人公は売れない作家。そのため、ポルノやミステリ、SFなどジャンルごとに筆名を使い分けている。糊口を...
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アジャストメント

フィリップ・K・ディックといえば、SF作家の巨匠として知られる。映画化された作品は数多い。だが、著者はとうの昔に世を去っている。没年が1982年というから亡くなって30年以上経つ。それなのに2010年代になってもなお映像化された作品がスクリ...
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プランク・ダイブ

本書を読む前、無性にSFが読みたくなった。その理由は分かっている。本書を読む少し前からワークスタイルを変えたからだ。常駐先での統括部門でのフル稼動から、月の半分を自分で営業し仕事を請けるスタイルへ。それは技術者としてプログラマとして第一線に...
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写実絵画の魅力

本書を読む前の年、2015年の秋に妻とホキ美術館を訪問した。ホキ美術館とは千葉の土気にある写実絵画専門の美術館だ。もともと私は写実絵画に関心を持っていた。そんなところに誘われたのが日向寺監督による映画「魂のリアリズム 画家 野田弘志」。私の...
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囲碁の源流を訪ねて

2016年前半を彩るニュースの一つに、コンピューターが現役囲碁チャンピオンを破る出来事があった。人工知能が到達した一つの節目として後世に伝えられるに違いない。そんなニュースもあり、私も教養の一つとして囲碁の歴史を学んで見ようと志したのが本書...
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真田幸村のすべて

本書を読んだ時、NHK大河ドラマ真田丸によって真田幸村の関心は世間に満ちていた。もちろんわたしの関心も。そんな折、本書を目にし手に取った。編者は長野県史編纂委員などを務めた歴史学の専門家。真田氏関連の著書も出しており、真田家の研究家としては...
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祈りの幕が下りる時

著者の、いや、日本の推理小説史上で私が一番好きな探偵役は?と問われれば、私は加賀恭一郎を推す。怜俐な頭脳、端正なマスク、器の広さ。理由はいくつか思い付く。私がもっとも惹かれるのは彼の情を弁えたところだろうか。人間という存在の営み全てに対し、...
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後藤さんのこと

実験的といおうか、前衛的といおうか。著者の作品は唯一無二の立場を確立している。あまたの小説群が山々を成す中、孤峰として独立しているのが著者とその作品群だ。冒頭の表題作からして、すでに独自世界が惜しげもなく披露される。森羅万象、古今東西に宿る...
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秀頼脱出

唐突ながら、出版社には格があると思う。格が何かを表現するに、新聞を例にあげると良いだろう。例えばガセネタといえば東スポ、大スポであり、信頼できる新聞といえば日本経済新聞というように。もっともこの例も最近は怪しくなりつつあるけれど。要するに情...
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流れ星と遊んだ頃

著者の自在に変幻する叙述の技は、大勢いる推理作家のなかでも最高峰といってもよい存在だと思う。くだけた口調の独り語りでスタートする本書。だが、その語りこそが曲者だ。それぞれの章ごとに鮮やかに視点が入れ替わってゆく。誰の視点で語られているのか常...