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運命の人(四)

三巻の終わりでは、絶望し世を捨てようとする弓成元記者の姿が描かれた。続いての本書は、命を永らえた彼が沖縄で暮らすシーンで幕を開ける。彼が向かったのは沖縄。それも本島ではなく、さらに離れた伊良部島だ。福岡生まれの弓成元記者は、何ゆえ沖縄へ渡っ...
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運命の人(三)

第三巻では、優秀な弁護団の奔走によって弓成記者に無罪の判決が下る。弓成記者の無罪判決の一方、三木秘書は情報を漏洩させた罪が認定され、執行猶予つきの有罪判決がくだされる。表面的には報道側の勝利。ペンは権力には決して屈しないように読める。だが、...
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運命の人(二)

一巻で逮捕された弓成記者。数週間の拘留を経た後に釈放される。一方、三木秘書はより長く拘留され、情報漏洩の罪が自分にあると全面的に供述する。そんな三木秘書に対し、弓成記者は一貫して罪を認めぬように、と強く伝える。しかし、拘留されたことが三木秘...
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運命の人(一)

報道のあり方。それはジャーナリズムにとって常に問われる課題だ。ジャーナリズムには二つの権利がついて回る。それは、大衆が知る権利とニュースを発信する権利。その二つは限りなく近く、表裏の関係だ。だが同じ権利ではない。大衆が知る権利とは受身の権利...
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教誨師

本書にはとても考えさせられた。教誨師。私は今までの人生で教誨師を名乗る方に会ったことがない。教誨師と知り合いの人にすら会ったことがない。それもそのはず。教誨師が活躍するのは一般人にあまり縁のない場所だ。つまり刑務所や拘置所。そのような施設に...
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教場

以前から評判になっているとは聞いていた本書。読んでなるほどと納得した。面白い。本書は警察の内部を描いている。しかも警察学校を。わたしはミステリが好きだが、警察小説はそれほど読み込んでいない。警察学校を舞台にした小説も本書が初めてのはず。今ま...
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カフカ式練習帳

エッセイと小説の違い。いったいそれはどこにあるのか。本書を読みながらそんなことを思った。かつて、私小説という小説の一ジャンルがあった。作家の生活そのものを描写し、小説に仕立てる。明治、大正の文学史をひもとくと必ず出てくる小説の一ジャンルだ。...
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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

読読と名付けたこのブログをはじめてからというもの、真の意味で本を読むようになったと自負している。もちろん、今までもたくさんの本を自分なりに楽しみ、夢中になって読んできた。だが、今から思うと、本から得られたはずのものはもっと多かったのではない...
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帝の毒薬

戦後まだ間もない日本を戦慄させた数々の事件。下山事件、松川事件、三鷹事件。これらの事件は、少年の頃から私を惹き付けて離さなかった。本を読むだけではない。下山事件は慰霊碑にも二度訪れた。それら事件は、価値観の転換に揺れる当時の世相を象徴してい...
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嫌われ松子の一生(下)

上巻の最後で故郷から今生の別れを告げようと実家に戻り、そして出奔した松子。馴染み客が一緒に雄琴に移ろうと誘ってきたのだ。雄琴とは滋賀の琵琶湖畔にある日本でも有数の風俗街のこと。しかし、マネジャーになってやるからと誘ってきたこの小野寺という男...