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HUNTING EVIL ナチ戦争犯罪人を追え

人類の歴史とは、野蛮と殺戮の歴史だ。有史以来、あまたの善人によって数えきれないほどの善が行われてきた。だが、人類の歴史とはそれと同じくらい、いや、それ以上に悪辣な蛮行で血塗られてきた。中でもホロコーストは、その象徴として未来永劫伝えられるに...
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絢爛たる悪運 岸信介伝

本稿を書いている時点で、安倍首相の首相在職期間は戦後第4位になるそうだ。長期政権に向けて視界も良好、といったところだろう。安倍内閣の政策を一つ一つあげつらえばきりがない。だが、よくもわるくも自民党の伝統路線を堅実に歩んでいることは評価できる...
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朱夏

著者の作品は何冊か読んでいる。丁寧な描写から紡ぎだされる日本の伝統的な世界。それを女性の視点から描く著者の作品には重厚な読み応えを感じたものだ。その重厚さがどこから来るのか、本書を読んで少しわかった気がする。本書は著者の自伝的な作品だ。戦争...
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B29墜落―米兵を救った日本人

本書も前年秋に淡路島で訪れた学園祭のブックバザーで無料でいただいた一冊だ。太平洋戦争も敗色が誰の目にも明らかになった昭和20年。多くの国民が「戦局必ずしも好転せず」を理解したのは、日夜を問わず日本各地に飛来したB29を見上げてからだろう。日...
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川の名前

川はいい。川は上流、中流、下流のそれぞれで違った魅力を持つ。上流の滝の荒々しさは見ていて飽きない。急流から一転、せせらぎの可憐さは手に掬わずにはいられないほどだ。中流に架かる橋を行き交う電車やクルマは生活のたくましさな象徴だ。河川敷を走る人...
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マスカレード・イブ

『マスカレード・ホテル』は著者の多くの作品の中でも指折りの秀作だった。ホテル・コルテシア東京でフロントクラークを務める山岸と、潜入捜査のためホテルマンに扮する刑事新田。お互いの間にプロ意識の火花が散る。新田はホテルマンが徹底して顧客を優先す...
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神の子 下

上巻を通して少しずつまわりに心を開きはじめた町田。下巻では町田が社会に関わるに連れ、町田をめぐる人々の思惑がより活発になってゆく。町田に執着するのはムロイの率いる犯罪組織だけではない。それ以外にも謎の組織が暗躍する。町田の過去に何があったの...
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神の子 上

著者の作品を読むのは、久しぶりだ。江戸川乱歩賞を獲った『天使のナイフ』以来となる。久々に著者の作品を読んでみようと思ったことに特に理由はない。図書館で見かけてたまたま手に取った。だが、本書は期待以上に一気に読ませてくれた。まず、設定がいい。...
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慈悲の名君 保科正之

上杉鷹山、細井平州、二宮尊徳、徳川光圀。2016年の私が本を読み、レビューを書いてその事績に触れた人物だ。共通するのは皆、江戸時代に学問や藩経営で名を成した方だ。だが、彼らよりさらにさかのぼる時代に彼らに劣らぬほどの実績をあげた人物がいる。...
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生首に聞いてみろ

著者の推理小説にはゆとりがある。そのゆとりが何から来るかというと、著者の作風にあると思う。著者の作風から感じられるのは、どことなく浮世離れした古き良き時代の推理小説を思わせるおおらかさだ。たとえば著者の小説のほとんどに登場する探偵法月綸太郎...