読ん読く

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ベトナム観光公社

本書を読むのはおそらく三度目くらいだろうか。ふと手にとってしまった。何度も読み返してしまう中毒性。それが著者の作品だ。本書は、著者の短編集の中でも初期の頃に出版されたものだ。だが、この時点ですでに著者の毒は存分に吐かれている。今、読んでも強...
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終わりの感覚

正直に言う。本書は、読んだ一年半後、本稿を書こうとしたとき、内容を覚えていなかった。ブッカー賞受賞作なのに。本稿を書くにあたり、20分ほど再読してみてようやく内容を思い出した。なぜ思い出せなかったのか。それにはいろいろな原因が考えられる。ま...
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やぶれかぶれ青春記

本書も小松左京展をきっかけに読んだ一冊だ。小松左京展では、著者の生い立ちから死去までが、いくつかの写真や資料とあわせて詳しい年表として紹介されていた。著者の精力的な活動の数々は、小松左京展でも紹介されていた。あらためて圧倒された。だが、若い...
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ウロボロスの波動

宇宙とは広大な未知の世界だ。その広さの尺度は人類の認識の範囲をゆうに超えている。宇宙科学や天文学が日進月歩で成果を挙げている今でさえ、すべては観測のデータから推測したものに過ぎない。ビックバンや、ブラックホール。それらはいまだに理論上の推測...
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明日の子供たち

著者は、執筆スタイルが面白い作家だと思う。高知県庁の観光政策を描いた『県庁おもてなし課』や、航空自衛隊の広報の一日を描いた『空飛ぶ広報室』などは、小説でありながら特定の組織を紹介し、広く報じることに成功している。そのアプローチはとても面白い...
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十二人の死にたい子どもたち

意外なことに、本書は著者にとって初めてのミステリーらしい。考えてみれば、今までに読んだ著者の本は、SFか歴史小説だった。つまり、現代を描いた小説はまだ著していなかったのだ。だが、それを忘れさせるほど本書は素晴らしかった。まず、ネット上で呼び...
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海の上のピアニスト

本作が映画化されているのは知っていた。だが、原作が戯曲だったとは本書を読むまで知らなかった。妻が舞台で見て気に入ったらしく、私もそれに合わせて本書を読んだ。なお、私は映画も舞台も本稿を書く時点でもまだ見たことがない。本書はその戯曲である原作...
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A

著者の長編は何冊か読んできた。だが、短編は初めて読む。本書に収められた十三篇のそれぞれは、新たな著者の作風の一面を表していてとても面白く読めた。十三編の全てに共通するテーマとは何だろう。それは個々の人の生と社会の断絶ではないか。人が生きる上...
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介護入門

本書のタイトルの硬さに騙されてはいけない。タイトルと違い、本書はとても"パンク"な内容になっている。29歳独身の男性が、祖母の介護に携わりながら、音楽に自らの人生を賭ける。音楽の夢に自らを委ね、"パンキッシュ"な文体を操りながら、介護のあり...
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夏の約束

本書は、芥川賞を受賞している。図書館に設けられた芥川賞受賞作のコーナーで本書を手に取った。もちろん、読み始めた頃は著者についても本書の内容についても何も知らなかった。本書はゲイの話だ。ゲイとしての生き方と日々の暮らしを何の飾りも誇張もなく描...