2018-08

読ん読く

嘘をもうひとつだけ

私がまだ読んでいない「加賀恭一郎」シリーズは数冊ある。本書もその一つ。本作は連作短編集だ。五編が収められている。本書の全体に共通しているテーマは女性のうそについて。女性がつくうそにはさまざまな目的がある。その多くは自らの過失や犯した罪を隠す...
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ミスター・メルセデス 下

下巻は上巻からの承前で「毒餌」の章で始まる。ホッジズの友人ロビンスンの捜査を妨害しようと、ブレイディはロビンスン家の犬を毒殺しようとくわだてる。ところがその毒餌を、ブレイディの同居する母アンが誤って口にしてしまう。泡を吹いて死んでゆく母。こ...
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ミスター・メルセデス 上

著者と言えばモダン・ホラーの帝王。私は著者の作品のほとんどを読んできた。そして私の意見だが、著者はホラーに関わらず現代で最高の作家の一人だと思っている。例えば『IT』は読んでいて本気で鳥肌が立った。映画のような映像のイメージに頼らず、文章だ...
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旅猫リポート

久々に著者の本を読んだ。本書は猫が主役だ。冒頭から「吾輩は猫である」を意識したかのような猫の一人称による語りから始まる。そこで語られるのは、猫の視点による飼い主とのなれ初めだ。猫にとっては自らを養ってくれる主人との出会いであっても、そこに猫...
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硝子の葦

帯のうたい文句にこう書かれている。「爆発不可避、忘却不能の結末ノンストップ・エンタテイメント長編!」さすがにこの文句は盛りすぎだと思う。でも、一気に本書を読めたのは確か。序章で厚岸の街を舞台に起こった爆発事故。そこで亡くなった幸田節子は、な...
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しゃべれども しゃべれども

著者の本は初めて読んだが、とても面白かった。本書が面白いのは、読者のほとんどにおなじみの「しゃべり」が扱われているからだろう。しゃべること自体が小説のテーマになっていることはそうない。なぜなら人がしゃべるのは日常で当たり前のことだからだ。話...
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DINER

人体。私たちは常に、自らの体がこうあるという身体感覚を持っている。この感覚が狂った場合、私たちが感じるのは気持ち悪さだ。それは自分の体が狂った場合だけではなく、他人の体でも当てはまる。他人の体が人体としてあるべき状態になっていないとき、私た...
映画を観、思いを致す

ミッション:インポッシブル フォールアウト

イメージがこれほどまでに変わった俳優も珍しい。トム・クルーズのことだ。ハンサムなアイドルとしての若い頃から今まで早くも30年。今なお第一線にたち、相変わらずのアクションを見せている。しかもスタントなしで。ここまで大物俳優でありながら、芸術的...
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人間臨終図鑑Ⅲ

そもそもこのシリーズを読み始めたのは、『人間臨終図鑑Ⅰ』のレビューにも書いた通り、武者小路実篤の最晩年に書かれたエッセイに衝撃を受けてだ。享年が若い順に著名人の生涯を追ってきた『人間臨終図鑑』シリーズも、ようやく本書が最終巻。本書になってよ...
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孤児

本書にはヒトの営みが描かれている。「ヒト」と書いたのは、もちろん動物としてのヒトのこと。原初の人類を色濃く残す16世紀の南米インディオたち。南米全域がポルトガルとスペインによって征服され、キリスト教による「教化」が及ぶ前の頃。本書はその頃を...